トップへ トップ > 特集 > 2003年新春浅草歌舞伎
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今年も浅草に歌舞伎の季節がやってきました。
浅草公会堂にて平成十五年一月二日より「新春浅草歌舞伎」が予定されています。
もちろん、『浅草い〜とこ』では特集で取り上げます。
今年は“歌舞伎四百年”ということで記念すべき年、公演になります。
皆様に楽しんでいただければ幸いです。

■ 演目紹介 ■ 出演者プロフィール ■ チケットプレゼント ■ 鑑賞レポート ■ 番外編

『懸賞コーナー』のチケットプレゼントで第1回に当選された田中様よりレポートが届きました。
新年早々、当選!歌舞伎!浅草!2003年はいい年になりそうですね。(^o^)

本日の浅草歌舞伎に当選して頂いた田中です。
今日のこの日の来る事を大変楽しみにしておりました。
車引での、松王丸・梅王丸・桜丸の三兄弟はとても凛々しく大変素敵でした。
また、道成寺での七之助さんも静と寂がとてもリアルに表現されていて素敵でした。
義経千本桜は、親と子の絆、特に子が親を思う愛情の強さを素晴らしく表現していて、感動し涙ポロポロものでした。
やはり若手の方の台詞、立ち回りは力強く心に響きました。
来年もぜひ浅草歌舞伎を鑑賞したいと思います。
本当に当選して良かったと思います。
有難うございました。

「浅草い〜とこ」レポーターの沢井まみの鑑賞レポートです!

ビジュアル系が大活躍の歌舞伎界 〜キレイな男に元気をもらう。〜

 新春浅草歌舞伎のCMやポスターをご覧になった方は、あまりのカッコよさに見とれたに違いない。まるで、旬の若手俳優ばかりの豪華キャスティングで一世を風靡した伝説のハリウッド映画「アウトサイダー」を想起させるような皮ジャン姿のイケメンたちが、浅草の街をバックにカメラ目線で迫ってくる。彼らこそ、平成歌舞伎五人衆・市川亀治郎、中村勘太郎、中村七之助、中村獅童、市川男寅。涼やかな眼差しと立ち振る舞いが、渋谷当たりをブラブラしているイケメンと一線を画する。いったい彼らはどんな演技をするのだろう、そんんな、ワクワクするような期待感をかきたてる。

1月9日の午後、新春浅草歌舞伎を見るために、浅草公会堂に出かけた。1日2回公演で、第1部は午前11時から、第2部は午後3時からという設定。終演後、浅草の「食」をじっくりと味わってほしいという配慮から、通常よりも開演時間を早めたという。心憎いばかりの気遣いだ。最近の中村獅堂人気で若い女性の客が多いのかなと思ったが、中年から年配の女性が9割ほどを占めている。平日の午後という時間帯に、優雅に歌舞伎を楽しめるのはこの世代の女性の特権なのかもしれない。七草粥も過ぎたというのにチラホラと晴れ着姿の女性もいて、この空間だけは未だ正月気分だ。年始の挨拶は市川亀治郎。羽織袴が凛々しい。これこそ日本男児という出で立ちと、よく通る声に、ボーッと見とれるお嬢さん方(みのもんた風)。演目は「菅原伝授手習鑑より車引」「奴道成寺」「義経千本桜より川連法眼館の場」の3本。1部と2部、同じ演目だがキャスティングが違うので、歌舞伎ファンなら両方見たいところだろう。

最初は「菅原伝授手習鑑〜車引〜」。市川男寅が演じる梅王丸、中村七之助演じる桜丸、そして中村獅堂演じる松王丸という3兄弟(三つ子だったりする)がこの物語の主人公だ。3人が兄弟であることは、おそろいの白地に紫の格子柄、厚綿という風変わりな衣裳で表現されている。また、3人の性格は、髪型や顔に描かれた筋隈から判断できる。「梅王丸は気性が激しそうね」とか「桜丸は優しげな感じ」など。う〜ん、歌舞伎って親切。こういうのを「型にはまっていておもしろくない」と言う人もいるが、とんでもない!一種の記号である衣裳や見得(決めのポーズ)といった「型」に、役者さんが入ることによって、その「型」からはみ出すような、他を圧倒する個性が生じるのだ。カッコいいキャラは、よりカッコよく。美しいキャラはより美しく。で、ハマりました、私。中村七之助にラブラブ(ポッ)。美しくて色っぽい優男が好みの私としては、「桜丸」はうってつけのキャラクター。それを演じる七之助の色っぽいこと! 3番目の演目「義経千本桜〜川連法眼館の場〜」では、七之助さん、義経の愛妾・静御前の役で登場するが、こちらもホントに美しかった! 今、旬の人・中村獅堂(私にはちょっと男っぽすぎる?!)も、イマドキの金髪の若者の面影はなく、堂々たる風格の松王丸を好演。血管が切れそうな熱い演技の市川男寅もよかった。

2番目の演し物は「奴道成寺」。桜が咲き誇る寺の境内、天井からぶら下がった大きな釣鐘。隣の席の奥様達が、「あの鐘、あの鐘の上に(役者さんが)乗るのよ!」と興奮気味に話している。そうか。クライマックスではあの鐘の上で白拍子花子(実は狂言師・左近)を演ずる市川亀治郎が見得を切るのね。で、亀次郎さん、鐘の上のポーズ、決まってました! ごめんなさい。そこに至るまでは、心地よい睡眠に襲われ、所どころしか記憶にありません。

ところで、話は変わるが、歌舞伎とクラシック・コンサートって似ていると思う。ほら、クラシック・コンサートでもあるじゃないですか。ものすご〜く心地よくて、つい、ウトウトしていると、突然、打楽器や金管楽器のドーン!という大音響で起こされるってヤツ。あれと同じ。つまり、人にとって心地よい「緩」と「急」が、歌舞伎にもあり、それが「眠るまい」としている私を、眠りへと誘ったように思う(言い訳)。

ラストの演目「義経千本桜〜川連法眼館の場〜」は、文句なしにおもしろかった。源義経(市川亀治郎)の家臣・佐藤四郎兵衛忠信と、彼に化けて静御前(中村七之助)に付き従ってきた狐の1人2役を中村勘太郎が好演。特に正体がばれて狐の姿になった後の演技は、本物の狐のよう。軒下から、あるいは天井裏から姿を現す、神出鬼没の狐。その身のこなしの鮮やかさに見とれる。義経に、親狐の皮を使った「初音の鼓」を与えられた後のうれしそうな様子ったら、抱しめたいくらいかわいらしい。でも、花道を踊りながら去っていく勘太郎の首筋や額には玉のような汗が。がんばってるんだなあ。役者ってすごいなあ。勘太郎を割れんばかりの拍手で見送った観客たちは、みな、同じ気持ちだったに違いない。真剣な若者(美しければ尚可)の汗は美しい!

 5人の歌舞伎イケメンの活躍を存分に堪能し、いっぱい元気をもらって、気分も晴れやかに浅草公会堂を後にしたのだった。うなぎでも食べていくか。ダイエット中だから、蕎麦でもいいな。浅草の夜はこれからだ。

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